長きにわたり第一線で活躍し、クラブを牽引しつづけたセリフォスが昨年限りで現役を引退、種牡馬となりました。スタッドインの発表以降、次々に交配のお申込みを頂戴したようで、新天地においてもなかなかの人気ぶりです。仕上がりの早さや豊かなスピードなどダイワメジャー譲りの武器と併せて、特別に備わっていたともいえる瞬発力までも、産駒へ余すところなく伝えてくれるに違いありません。
さて、つぎなるヒーロー、ヒロインを探していただく募集馬会員募集がスタートしました。2025年12月で追分ファームは創業30周年になります。振り返れば、たくさんの人馬との出会いをはじめ、さまざまな出来事に遭遇しました。そのすべてが必然で、訪れた試練や困難を乗り越え、こうして節目のときを迎えることができたのは、つねに信じて応援してくださる会員の皆さま、さらには汗水たらしながら懸命に働くスタッフのおかげです。繁殖、イヤリング、調教の各部門で新厩舎がオープンし、牧場を手がける人数は過去最多にのぼりました。生産頭数も増加の一途をたどり、例年以上にあまたの候補のなかから、新たな厳しい基準をクリアしたものばかりを募集馬として集め、リスクの最小化と全体のレベル向上を図っています。
本書や繁殖牝馬名簿をめくると、たしかな変化を感じることができるでしょう。昨年もお伝えの通り、根幹になる可能性を秘めた牝馬を海外から積極的に導入するなど、血の入れ替えを継続かつ加速しながら推し進めています。数年前に比べ顔ぶれは一変し、若返りが実現しました。輝かしい戦績のビッグネームが血統表に刻まれた名牝に対し、ベストな配合相手を選択することで、誕生して育った各馬のスケールは格段に上がった印象です。しかれども募集価格は、多くの方々にご覧いただき、口取りを含めた心揺さぶられる感動体験をご一緒したいとの想いと感謝の念を込めて、控えめに設定しました。出資をぜひ前向きにご検討ください。
層が厚くなったのは、募集馬や繁殖牝馬のみにとどまりません。現3歳馬は勝ち上がりが増え、現2歳馬についても大半が順調な過程を歩み、早期デビューを目論んでいます。拡張のさなかでも中身は希薄化しないどころか、1頭1頭にありったけの愛情を注ぎ、ごくささやかな変化も見逃さず迅速に対応する管理体制が確立され、各所の連携も深まりました。馬場の調整や休息を挟むタイミングが正解により近づいたとの事実は、たくましく成長を遂げた馬体からも明白です。これら地道な積み重ね、攻めの取り組みが、理想と現実の完全一致を招くことでしょう。
また、最近は出走機会や結果を求め、障害転向、南関東転籍などの手段が定着してきました。地方競馬に関しては、交流重賞におけるボーナスが拡充された点もメリットです。ディクテオンはダイオライト記念と川崎記念で本来の賞金に加え、各800万円のダートグレード競走褒賞金を獲得しました。かように所属馬それぞれが置かれた状況に応じ、的確なジャッジを下すことこそ我々の使命です。だれもが納得の運用はそうたやすくないでしょうが、強い責任感を持ったうえで、ポテンシャルを最大限に引き出し、顧客満足度が高まるプロセスを踏まねばなりません。
『Weʼve Just Begun』―追分ファームのスローガンを設定してから歳月は流れ、つぎなるステップへと突き進む時期が到来しました。これまでに培った経験と若者たちのみずみずしい感性をうまく融合させながら、チーム一丸となって進化しつづけてまいります。もちろん、ニーズやトレンドを正確に把握し、代替できない価値の提供に挑む姿勢、皆さまと真摯に向き合って絆を深め、ともに創りあげていくという熱い気持ちは、いまも今後もいっさい変わりありません。まだ不足している部分を着実に埋め、ますます愛着を抱いていただける企業に。G1サラブレッドクラブ設立からも15周年を迎えるにあたり、あらためての願い、そして誓いです。
株式会社G1サラブレッドクラブ 代表取締役 吉田 晴哉